フットサルカフェ「KEL」訪問 [桑原慶]
5月24日晴天。14:40南砂町集合――。
一つ手前の駅、東陽町で待ち合わせしておくべきだった……。
南砂町は地下鉄東西線の駅なのだが、快速に乗ってしまうと、東陽町の次はあっという間に、わざわざ千葉県の「浦安」まで運んでくれてしまうのだ。
まんまと乗り過ごして、浦安から急いで戻る。
南砂町の駅を降りると、編集者が駅前のコンビニから出てきた。
コンビニがあってよかった……というぐらい、南砂町の駅前はガラーンとしている。何もない住宅街。
南砂町東陽町と南砂町の間をつなぐ明治通りを歩いていると、突如として人工芝のコートが現れる。青い空との相性は抜群だ。
コートに併設されて幼稚園とフットサルカフェ「KEL」(ケル)がある。
「組織のなかの一員ではなく、“自分からなにかを発信したい”“なにかを表現したい”という思いがずっとありました。その“なにか”がアートなのか、ビジネスなのかわからないまま、ゲーム業界に身をおいていた、という感じです」というのは、KELのオーナー、桑原慶さんだ。
桑原さんは今から4年前まで、ソニーコンピュータエンターテイメントでゲームプランナーをしていた。
最初に担当したのは『ICO』というゲーム。
頭に角を持って生まれた少年が、それ角のために生け贄として「霧の城」に連れてこられる。しかし、閉じ込められていた棺が偶然にも開く。その場から逃げ出し、階段を駆け上がると、その先で囚われた少女と出会う。少年は少女の手を引き、城からの脱出を試みる……というストーリーだ。
http://www.i-c-o.net/main/index.html
「『ICO』は、爆発的にヒットしたわけではないのですが、当時、動きや空間、光などで魅せる、非常に芸術性の高いゲームでした。それに、架空の国の物語で、ストーリーにも膨大なバックグラウンドがあった。ゲームを終えた人に静かな感動を呼び起こすゲームです。僕はあまり人のことを“天才だ”と思うことは少ないのですが、このゲームのディレクターの上田文人さんは天才だと思いました」
桑原さんはそのストーリーやステージのアイデアを考えたり、ゲーム中の架空の国の言語をつくったり、プログラマーやデザイナーとの間に入ったり、といった仕事をしていた。
時には、ゲームの説明書を書くこともあった。操作説明などもゲームのタッチにあわせ、物語調に書かれている。
作家の宮部みゆきさんが『ICO』の大ファンで、その小説を出版している。その本の冒頭の一節
――いつだかわからない時代の、
どこだかわからない場所でのお話。
宮部みゆき『ICO―霧の森―』(講談社)より
は、桑原さんがゲームの説明書に書いた部分だそうだ。
桑原さんの創造性は、ゲーム業界で、どんどんと培われていった。
が、その完成を見ると同時に、彼は会社を辞め、別の世界へと羽ばたくことになる。
次回へ続く・・・
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