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フラメンコの中心は実は「カンテ(歌)」だった [那須慶一]

情熱の国、スペイン——。
つま先とかかとで踏み鳴らす激しい音。
届かない何かをつかむようにのばされる手、
片手ではスカートの裾をひるがえし、情感あふれる踊りで観客を魅了するフラメンコは、スペイン南部のアンダルシア地方の観光には不可欠といえよう。
そのフラメンコになくてはならないのが「カンテ」(歌)と「トケ」(ギター)だ。





「フラメンコというと、バイレ(踊り)のことだと思っている人が多いのですが、本当はカンテ(歌)のことなんです」
というのは、プロのカンテ、那須慶一さん。


■「バイレ(踊り)」



さて、ちょっとだけ歴史の勉強を。
15世紀半ばから「ヒターノ(いわゆるジプシー。ジプシーは差別用語なので現在は使われない)」は、スペインに入ってきて、17世紀ごろスペイン南部のアンダルシアに定住し始める。
ヒターノたちは、スペイン民謡の影響を受けながら歌い始めた。
これがフラメンコの原型である。ヒターノに言わせれば、フラメンコとは「カンテ」なのである。



■「カンテ(歌)」と「トケ(ギター)」



近頃女性に大人気のフラメンコ。
フラメンコの伴唱ともなれば、女性に囲まれ、うらやましいばかり……と垂涎する諸兄も多かろう。
もちろん、那須さんがプロのカンテを目指そうと思ったのは、そんな不純な動機ではない。


「20代前半は色気があって、いろいろ手を出していたんですよね」
不純な動機ではない。
あれ? 不純な動機ではないはずだが……。


「手を出してたのは音楽に対してですよ(笑)。ロックもフュージョンも、民族音楽もいろいろ聴いていたってことです。耳でコピーして歌えない曲はありませんでしたね。でも、フラメンコだけは違った。単純には歌えなかったんです」





フラメンコを歌うきっかけは、大学生までさかのぼる。
那須さんは、他大学と合同のいわゆるインカレの軽音楽サークルに所属していた。
バンドをやっていたというわけではなく、声が高かったため、キーの高い曲を演奏するときに声をかけられる「雇われヴォーカリスト」だった。
そして、法政大学の学園祭のとき、たまたま、“フラメンコの伴唱をしてくれないか”とお声がかかったのだ。


セビジャーナスというフラメンコ初心者が必ず習う踊りの伴唱。
ただ、そのときはそれほど強い興味を抱いたというわけではなかった。
そのあと、何度かフラメンコの公演を見に行くうちにだんだんはまっていったんだそう。


「カマロンという歌い手がいるんです。僕がフラメンコにのめりこんだ原点ともいうべき人。何度聴いても“これ、何なの?”っていうぐらいのリズムだとか、日本では考えられないようなピッチの流れとかが、すごくかっこいいんです。とても耳だけでは、単純には コピーできない」


そのカマロンの歌を教えてくれるという先生がいたので、24歳のとき、その先生について習い始めた。それがプロへの道の第一歩だった。



パリ1987

パリ1987

  • アーティスト: カマロン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルインターナショナル
  • 発売日: 2000/04/01
  • メディア: CD




「アンダルシアという地方自体が、ユダヤ、ケルト、イスラム、インド、ヨーロッパ、あらゆる土地の影響を受けて今に至っていますからね。フラメンコはスペインの民族音楽、民族舞踊といっても、単純なフォークロアではないんです。複合的にいろいろな音楽の影響を受けている。その奥深さがわかってきたら、やめられなくなっちゃって」


それからはフラメンコ一色の日々だ。
とにかく、時間があれば絶えず聴いているという。
日本人にはない独特のリズム感。歌いながらパルマと呼ばれる独特の手拍子で拍をとる。


「ないものは得るしかないですからね。フラメンコを聴くのはインプットする作業です。1日の半分はフラメンコを聞いているんじゃないかな。フラメンコのリズムは、本当にかっこよくて、ずっと聞いてても飽きないんですよ。フラメンコというと、なんとなく泥臭いイメージを持たれますけれど、すごく洗練されているんです。歌い手によっても印象が全然違うし」。


聴く音楽も、自分のなかで自然淘汰されていき、30歳になる頃には、フラメンコしか聞かなくなっていた。
イメージした音に近づけるためには、インプットだけでなく、アウトプット、つまり歌うことも必要だろう。
次回は、「歌うこと」について詳しく聞いてみる。



2006-08-17 21:57  nice!(1)  コメント(5)  トラックバック(1) 
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コメント 5

tamamusi

あるDVDで、フラメンコダンサーに「君、歌は歌えるの?」と質問している物があった(様な気がする…)
いくら上手に踊れても、歌が歌えなければ本当のフラメンコは踊れないのでしょうね。
う~ん、フラメンコは奥が深い!
by tamamusi (2006-08-19 13:27) 

タカミ師匠

那須君!法政大学の学祭以来だね!
って、覚えていらっしゃらないかもしれませんが、活躍されていて
とっても嬉しいデス。
更なる活躍を期待しています。
by タカミ師匠 (2007-01-05 16:52) 

さくらい

那須慶一さん、先日ノヴェンバーイレブンスでのフラメンコライブでたまたま初見、つき抜ける高音にしびれました!しかも強い声なので、もう気持ちいい~!!
今までは踊り中心で見ていたのですが、今回カンテに目が行き過ぎて困りました。今後の出演予定を知るすべはないものでしょうか? ぜひぜひカンテ中心のライブに行ってみたいのです! 
名前で検索したこのブログでやっと正面のお顔を拝見できました。ライブではずっと斜めだったので。ホームページないのが残念。今後も応援しています。頑張ってくださいね! 良いライブ、ありがとうございました。
by さくらい (2007-01-30 00:00) 

名古屋市のロコスタジオ

那須さん元気ですか?この前、先生と那須さんの事で話しが盛り上がりました♪ウチは名古屋芸術小劇場の時の那須さんのカンテをダビングして毎日、仕事の通勤で聞いてます♪何故かパワーがでるのですo(^-^)o那須さん東京だから 今度、是非、東京に行きたいと思ってます!又素敵な歌声聞きたいです!頑張って下さ~い!
by 名古屋市のロコスタジオ (2007-10-06 04:03) 

春野


出会いの季節っしょ♪
一人暮らしの女とかマジですぐポンポン落ちておもしれーww
お姉さん美味しかったです(^q^)
http://qab6fhk.www.sofban.info/qab6fhk/
by 春野 (2011-04-09 01:34) 

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