A&Rで決まる音楽もある [小林雅也]
■過去記事
・知る人ぞ知る、レコードショップ「Jazzy Sport」
http://blog.so-net.ne.jp/dir_man/2006-06-19
・音楽バカ×スポーツバカ≒Jazzy Sport!?
http://blog.so-net.ne.jp/dir_man/2006-06-21
・トップクラスの音楽関係者が「Jazzy Sport」に集結
http://blog.so-net.ne.jp/dir_man/2006-06-23
・音楽とスポーツの共通点は「魂」
http://blog.so-net.ne.jp/dir_man/2006-06-26
・“グルーブ”は音楽、スポーツ、人生に不可欠
http://blog.so-net.ne.jp/dir_man/2006-06-28
就職の際、DJで稼いでいこうと思わなかったのか? という質問に、小林さんはこう答えた。
「レコードを聴いているとき、ジャケットを眺めるのが楽しいんですよ。“オレ、このベースの音が好きだな”と思ってベーシストを見ると誰だかが判明しますよね。“この人の作品だけど、このベースの人がいい味出してるんだな”と思って、そのベーシストのほかの作品を聴く。そうやっていくと、どんどん音楽が広がっていくんです。
そのなかで、好きな作品には同じ“A&R”が関わっているということに気がついて」。
A&Rとはプロデューサーやディレクター的な存在。アーティストを総括してプロデュースしていく仕事だそうだ。裏方なのだが、その人がいないとレコードが成り立たない。その仕事をしてみたいと思ったという。
有名なA&Rとしてはクインシー・ジョーンズがいる。彼はアーティストであると同時に、マイケル・ジャクソンのすべての曲や『WE ARE THE WORLD 』を担当している。
「どんなにいいアーティストがいても、いいA&Rがいなければアーティストは生きてこないんだな、と学びました。うちのプロダクションでは、自分自身の作品もつくっていってますが、アーティストのA&Rをやってます。曲づくりから関わることもあれば、ジャケットを撮るとなったら、“あのカメラマンで、こういう写真にしよう”というトータル的な部分もありますし、いろいろです」
“グルーブ”は音楽、スポーツ、人生に不可欠 [小林雅也]
■過去記事
・知る人ぞ知る、レコードショップ「Jazzy Sport」
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・音楽バカ×スポーツバカ≒Jazzy Sport!?
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・トップクラスの音楽関係者が「Jazzy Sport」に集結
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・音楽とスポーツの共通点は「魂」
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「ジャズは、即興性があるところが好きですね。相手の演奏を聴いてそれに応える形で音楽が進んでいく、まさに“セッション”ですよね。それぞれがその場で感じてベストだと思うことをすると、いいグルーブが出て、いい音楽になっていく。それはスポーツにも通じることです」。
ジャズにはコード、スポーツにはルールとある程度の決まりごとはあるけれども、どちらも、ライブや試合など、その場になってみないとどういう状況になるかはわからない。
メンバーそれぞれが、いい判断をしていけばいい試合になるけれど、1人でも間違った判断をしてしまったら、パスはつながらないし、ゴールもできない。つまり、勝利にはつながらない。
「例えばサッカーでゴールが決まるときは、その前にきれいにパスがつながるじゃないですか。野球も点が入るときって“ここ一発きそうだな”とか流れで感じますよね? そういうのは個々の選手が生み出してるグルーブだと思うんです」。
“それは音楽とスポーツに限ったことではない。人と人とのかかわりについても同じだ”と小林さんは続ける。
その場その場で相手を尊重して、なおかつ自分の言いたいことはちゃんと伝える。それがかみ合ったときに、いいものがうまれる、と。
小林さんの好きな音楽はまぎれもなくジャズなのだが、一般的にとらえられているジャズの枠組みとはちがう。そのとらえ方は大学時代、卒業論文でジャズを研究したことで培われた部分も大きい。
音楽とスポーツの共通点は「魂」 [小林雅也]
■過去記事
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・トップクラスの音楽関係者が「Jazzy Sport」に集結
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サッカーのワールドカップもいよいよ決勝トーナメントに突入した。
フットサルの世界でも『アディダスカップ』という世界大会がドイツで開催されるのはご存知だろうか。
実はこの大会に日本代表として、小林さんの率いるチーム「Jazzy Sport」が出場するのである。
業界人を対象としたフットサルのトーナメントで、J-waveチームやHMVチーム、キック・ザ・カンクルーのメンバーがいるチームなどが参加。元ベルディーの選手の率いるチームなども出場している。並み居る強豪をしりぞけドイツへの切符を手に入れた。
「フットサルは前の会社の同僚に誘われてやりはじめたんですけれど、ドップリはまってしまって。そのあたり、僕はストイックなので、より高いレベルを求めるようになっていくんですよ。
それに、“スポーツと音楽の融合”と掲げている以上、スポーツをやっていくことも仕事のひとつだと思っているんです。結果を出せば、プロダクションに箔がつく。
もちろん、世界大会でも優勝を狙っています。プロダクションとしての視野も“日本だけじゃない、世界だ”ということをアピールできますからね」。
トップクラスの音楽関係者が「Jazzy Sport」に集結 [小林雅也]
■過去記事
・知る人ぞ知る、レコードショップ「Jazzy Sport」
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・音楽バカ×スポーツバカ≒Jazzy Sport!?
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就職にあたっては、盛岡でアルバイトをしていた時代に培った人脈が役立った。
「でも残念ながら、メジャーのレコード会社で“いい音楽つくってるな”と思える会社がなかったんです。それで“ここしかない”と思って」
小林さんが唯一興味のあったのは「ファイルレコード」という会社。この会社、インディーズではあるが、スチャダラパーの最初のアルバムを出したり、藤原ヒロシ、高木完などの日本のクラブ文化を最初につくった人たちが活動していた、当時“かなりとんがってた”レコード会社なのだ。リップスライムやゴスペラーズ、ライムスターもメジャーになる前はこの会社に所属していた。
ハウスものやクラブものをやっている人にとっては日本で唯一の登竜門的な会社で、かなりコアな音楽をつくっていた。
ただ、3年勤める間に、自分のやりたい音楽とは若干違う点が出てきた。それがストレスとなり、同じ会社の先輩と話したところ、同じストレスを抱えていることがわかった。
「それで、“独立しようか”っていう話になったんです。これが、Jazzy Sportというプロダクションの立ち上げのきっかけ。最初は店もなく、アーティストの制作の手伝いとかマネージメントとかをしてました。それで、『DJ-MITSU THE BEATS(ミツ・ザ・ビーツ)』というアーティストの作品をてがけたんです」
NEW AWAKENING
この作品が海外で評判となり、世界的な注目を集める。今は日本に逆輸入される形で、ジリジリと人気が上がっているという。
その作品を手がけたことで、プロダクションとして注目されるようになった。
当時、渋谷のレコードショップなどは、どんどん商業的に大きなレベルになり始めていた。「売れるものだけを売る」というスタンスになっていくなかで、トップクラスのバイヤーや店長たちなどのキーパーソンたちも“これでは本当にいい音楽を売ることができない”というストレスを感じ、“レコードを通して、音楽の本当のよさを伝えたい”と思っていたという。
そこで、それを伝えられるレコードショップを作ろうとはじめたのが「Jazzy Sport」のショップである。渋谷のレコード業界において、日本トップクラスの人たちがこぞって会社をやめ、「Jazzy Sport」に集結した。それはいわば、レコード業界の「革命」であった。
http://www.jazzysport.com/
ショップと並行してさまざまなアーティストの制作を手がけ、大手のレコード会社からも“おもしろいプロダクションだ”と注目を集めるようになる。
もちろん、小林さん自身も、DJとしての活動や、作品づくりをしていた。
そうしたなかで、小林さんがDJをつとめていた伝説的な青山のクラブ『Mix』のメンバーでCDを出さないかとソニー・ミュージックから声がかかる。
それが昨年5月に発売された『breakthrough』というアルバムだ。
http://www.sonymusicshop.jp/detail.asp?goods=KSCL000000828
この作品がまた評判を呼び、プロダクションも有名になっていった。
小林さんの略歴はよくわかった。ただ、小林さんの言う“いい音楽”、“本物の音楽”とはいかなるものなのか。いよいよ次回はその真髄にせまる。
音楽バカ×スポーツバカ≒Jazzy Sport!? [小林雅也]
■過去記事
・知る人ぞ知る、レコードショップ「Jazzy Sport」
http://blog.so-net.ne.jp/dir_man/2006-06-19
とにかく、私にはDJなるものの生態がまったくわからない。
ターンテーブルは押入れの奥にしまわれたまま、みたいななんちゃってDJはいたが。
そもそもDJになろう、というきっかけはなんだったのだろう?
「音楽に携わるという意味では、4歳のときからはじめたクラシックピアノですかね。父親に“ピアノを買ってくれ”と土下座したらしいですよ。『エリーゼのために』がどうしても弾きたかったみたいです。でも、あれって簡単じゃないですか。あっという間に弾けるようになっちゃって」
などと、かるーくのたまっておりますが、私など、5年もピアノを習い続けて、最後の発表会の曲が『カブトムシが兄弟で』という誰も知らない曲でしたぞ! その時点で音楽的才能に圧倒的な差を感じる(いや、人生そのものか?)。
そんなわけで、小学生前半でクラシックピアノにはけっこう満足してしまい、小学4年生でテニスを始める。「たいしたことないんですけど」というが、聞いてみれば、神奈川県ベスト8まで残るという腕前。……あなたの「たいしたこと」の基準って一体何なんですか?
クラシックピアノに満足したといっても、ピアノは続けていた。ただクラシックからニューミュージック系へと傾倒していった。スポーツも並行して続けていく。中学でテニスには満足して、高校・大学ではバスケットを選ぶ。
「Jazzy Sport」は “音楽とスポーツの融合”がコンセプトだ。
「そのコンセプトは、自分が単にスポーツがばかみたいに好きだからなんですよ」と小林さんはいう。
既に「Jazzy Sport」の素地は小学生時代にできあがっていた。それが今までずっと途切れなく続いているのだ。
では音楽への興味が、「DJ」という形に結びついていくきっかけはなんだったのか。
それは、中学生の頃、両親が好きで聞いていたジャズに由来する。当時小林さんは、単にファッション感覚的でヒップホップを聞いていたという。
「でも、よく聞いてると、ジャズの一瞬の音を録音して、―それをサンプリングって言うんですけど―、例えばイントロのおいしい部分を何度も繰り返すことによって、まったく違う曲をつくりあげている。こんなところにジャズの要素が隠れている、ヒップホップも意外と音楽的なんだな、と気づいてからは、ソウル、ファンク、レゲエ、ラテンなどのルーツ・ミュージック、つまり“音楽の歴史をさかのぼったところにある音楽”に奥深さを感じて、CDとかレコードとか買いあさりましたね」
今あるレコードは1万枚以上だ。
そして大学。
彼は「岩手」を選んだ。
なぜ岩手なんだ???
「自然が大好きだったというのはありますね。あと、その頃、自分のことをよくわかり始めてたんで、このまま東京の大学で適当に遊んだら、たいした人間になれないな、と思って」。
器のでかい人は違うな、10代で自分の人生を悟るんだ……という感想はさておき。
大学に入ってすぐ、盛岡のクラブでDJとして音楽活動を始める。4年間同じ店に勤め、東京や外国からアーティストを呼んでイベントを開催するまでのキャリアを身につける。
ここでも常に音楽とスポーツは同時進行だ。ウインタースポーツが好きだったというのも、
岩手の大学を選んだ理由のひとつ。
冬場は「バックカントリースキー」にはまるという。これ、リフトで上ったその先まで山を登り、新雪をすべり降りるというもので、スキー1級レベル(←余裕でスキーのインストラクターになれるくらいのレベルです)の高度な技術がないと、とてもできないスポーツだ。
「級は持ってないですけど、たぶん1級ぐらいのテクニックはあると思います」とさらりと言ってのける。何でも極めないと気がすまないタイプらしい。
“天は二物を与えず”というが、そんなの絶対うそだぁぁぁ!!!
その類まれなるセンスと能力が、どの花開くのかは、次回紹介しよう。
知る人ぞ知る、レコードショップ「Jazzy Sport」 [小林雅也]
前回登場してくださったフットサルカフェのオーナー桑原慶氏。彼のカフェでイベントなどをやる際にDJをつとめるというのが、今回ご紹介するMASAYA FANTASISTAこと、小林雅也さんだ。
DJ……。私の人生でもっとも縁遠い人種のひとつである。
おしゃれなイメージだが、妙に威圧感がある。
音楽のことはさっぱりわからない私にとっては、共通言語がないため、よくわからない引け目と劣等感を感じることもある。
ある種のヒエラルキーの頂点に君臨し(なんのヒエラルキーだかわからないが)そのヒエラルキーにおける上位のものだけが話すことを許されている、私とは身分が違う人々……。
取材する前のDJのイメージはこんな感じだった。
取材は彼のスタジオ。が、待ち合わせをしたのは、住宅街にある、昭和のにおいが残っているオーダーメイドの洋服屋さん。
犬を連れて向こうから歩いてくる人がいる。
「もしかして小林さんですか……?」というと、さわやかに軽く手を上げた。
威圧感もないし、なんとも青空がよく似合う。
偏見に満ちたDJに対する人種差別(同じ日本人だけど)、身分差別(身分なんてないけど)してしまってごめんなさい。
彼がマネージメントしているクロマニヨンというバンドに、チャラの曲の関係で仕事が入って、そのスタジオからの帰りだという。片手に機材を持ちながら入っていったのは一軒家。
「ここはどなたかのお家なんですか?」と聞く編集者。
「いや、借りてるんです。屋根裏を改造して、一応防音設備らしきものも作ってみたんですが、途中でやめちゃいました(笑)。子どものときつくった秘密基地みたいなもんですよ」。
この屋根裏スタジオへ上がるのは、日曜大工などで使いそうなはしご。
小林さんは何でも手作りしてしまう。
小林さんの経営するレコードショップ「Jazzy Sport」も床板からレコードの並ぶ棚まで、木を使ってすべて手作りしたそうだ。こちらは“秘密基地”とは全く違い、完成度が高く、温かみのあるデザインだ。
このショップ、一度来たら、音楽の虜になって抜け出せなくなるという魔(?)の館。
「音楽って“自分はこれを聴くんだ”って肩肘張って聴いてる人が多いですよね。僕は音楽をジャンルわけすること自体が無意味だと思っているんですが、例えば女性はジャンルがよくわからない人が多い。そういう人のほうが本物の音楽に対してピンと反応するんです」
音楽に対してたいして知識のない人で、仕事の合間、ショップにフラッと寄ってCDを買ってしまったがために、
“こういう曲ってCDでないですよね”、“そういうのはレコードしかないですね”とやり取りし始め、どんどん音楽にはまっちゃって、ターンテーブルも買っちゃって、ショップに通いつめちゃって、しまいにはDJになっちゃった……、という人もいるらしい。
そんな魔法なら、私もかかってみたい。
小林さん、今イチオシのアルバム、ぜひ教えてください。
そして小林さんからのANSWER。
↓
「cro-magnon/cro-magnon」
「cro-magnon/nbsa+x÷~自然発火~」
http://blog.goo.ne.jp/cro-magnon-nbsa/
「DJ Mitsu the Beats/New awakening 」
渋谷駅から東急ハンズに向かう途中にあるビルの4階「Jazzy sport」で購入可能です。
1Fのサンマルクカフェが目印。
http://www.jazzysport.com/
さて、この小林雅也氏、DJとショップのオーナーというのはほんの一面でしかない。小林さんは「Jazzy Sport」というクリエーター集団の代表取締役。活動の範囲は幅広い。全貌は追々明らかにしていくことにして、次回はその多くの顔を持つ男の誕生秘話を探る。